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グラミー賞を2度受賞したベトナム人

ベトナム人で初めてグラミー賞を2度受賞した男がいる。彼の名はクオン・ブー。サイゴンに生まれ6歳で家族と一緒に渡米したクオン・ブーは、移住先の地で認められるようになりたいと強く願っていた。サッカー選手を目指したこともあったが、最終的にその道は選ばなかった。彼の父は「お前は身体が小さいから不利だろう」と言った。サッカーで身を立てるという彼の夢はかなわなかったが、それとは別の大きな夢をかなえることになった。

11歳の誕生日プレゼントに、両親はトランペットを贈った。辛抱強く練習しなければ扱いの難しい楽器だが、彼は学校でバンドに参加するようになり、その後フュージョンやモダンジャズに傾倒していった。ベルビュー中学校を卒業した後、ニューイングランド音楽学院に入学した。サックス奏者ジョー・マネリ、ベース奏者のデイブ・ホランドなどの著名なアーティストが教壇に立ち、クオン・ブーの才能に注目した。cuong_vu_main

クオン・ブーは25歳のときニューヨークに移り、すぐに頭角を現すようになった。彼の演奏を聴いた者はみな驚愕し、彼のことを「トランペットの魔術師」と呼んだ。それ以後彼は5枚のソロアルバムを出すとともに、多くの著名アーティスト(パット・メセニー、マイケル・ブレッカー、マイク・スターン、ジェリー・ヘミングウェイ、マーク・ヘリアスなど)のアルバム録音にも参加した。

彼がパット・メセニー・グループのメンバーとして参加した2枚のアルバムは、2002年と2006年のグラミー賞(ベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム部門)を受賞した。この「スピーキング・オブ・ナウ」と「ザ・ウェイ・アップ」の2枚は、フュージョンジャズが好きな人には必聴のアルバムといわれている。

こうした業績によりクオン・ブーは世界のトランペット奏者トップ50の常連的存在で、ジャズトランペッターのトップ5に選ばれたこともある。しかし彼のベトナム公演は残念ながらまだ実現していない。彼のスケジュールが演奏ツアーや録音で詰まっていることもあるだろうが、ベトナムでジャズを聴く人がまだ少ないことも理由の一つかもしれない。

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